2021年05月05日
by ぺんてる株式会社 |
公開:2021.05.05 00:00 更新:2021.10.04 16:23
November 18, 2014
ぺんてるは描画材をはじめ、様々な筆記具を製造している。しかし、ぺんてるが筆屋からその歴史をスタートさせたということはあまり知られていない。そのDNAを受け継ぎ、現在も売れ続けているのが、「ぺんてる筆(1976 年発売)」だ。 今や日本人にとって筆ペンは年賀状や祝儀袋などに書く際、なくてはならない存在だ。
実は、私たちが普段使っている合成繊維を使った毛筆タイプの筆ペンを世界ではじめて作り出したのは、何を隠そうぺんてるなのである。 今回、ぺんてる茨城工場で「ぺんてる筆」の製造開発のトップを務めているぺんてる中央研究所開発部第2開発室の大橋京弥さん、小倉和人さんにお話を伺った。
ぺんてる中央研究所開発部第2開発室の大橋京弥さん
大橋さんと共に筆ペンづくりを行っている ぺんてる中央研究所 開発部第 2 開発室 小倉和人さん
開発のきっかけは、ぺんてる創業者である堀江幸夫会長がある時お客さんから「筆とペンの中間のようなものはできないか?」と提案されたことだった。その当時(1970 年代頃)は、ウレタン素材を使った筆ペンと称するものしかなかったという。ウレタンは筆のような一本一本の毛ではなく、柔らかいゴムのようなひとかたまりのペン先だった。本格的な毛筆の穂先を持ち、それでいて手軽に使える「筆ペン」が求められていたのだ。
早速、研究所で開発がスタートした。まず開発にあたって、獣毛(イタチやネズミの毛)を一切使わないという方針があった。
というのも、そもそも獣毛は柔らかすぎて一般の人には使いにくいためだ。そこで、弾性が強く、しなりが良い合成繊維を使うことになった。
堀江会長からは、こんな目標が同時に掲げられた。それは筆作りに使われる獣毛の中で最高峰と言われる「イタチの毛」を使ったような筆ペンにすること。「イタチの毛」は獣毛の中でも滑らかでコシが強いものだった。
つまり、獣毛は使わないが、獣毛の最高峰を目指すという、ある意味で相矛盾することを目指すことになったのだ。研究所では、ありとあらゆる合成繊維をそれこそ何十種類も取り寄せ、ひとつひとつ筆ペンとしての適合性が調べ上げられていった。
最終的にこれならいけるとたどり着いたのはナイロンだった。ナイロン繊維は、水分を吸収すると程よい柔らかさが生まれ、同時に適度なコシもあった。まさに目標とする「イタチの毛」に近い素材だった。
素材が決まり、次に取り組んだのが一本一本の毛の先端の加工だ。「イタチの毛」は顕微鏡で見ると、先端にいくに従い、なだらかに細く尖っている。ナイロン素材は細長い円柱状で先端までまっすぐとしている。それを「イタチの毛」のようにしなくてはならない。これを「テーパー加工」という技術でイタチの毛に近づけたのだ。
根元から先端までを先細りにするテーパー加工技術が、「ぺんてる筆」最大の特長である。具体的な加工方法はさすがに極秘事項なので、詳しくは教えてもらえない。実は、ぺんてる社内でもこの加工に携わっているのはごくごく数人に限られている。
基本的な方法は、ナイロン毛を薬品に浸して溶かし、テーパーをつけていく。この技術は、繊維の先端を0.001mm以下の細さにまで自在に加工できる精密さを誇っている。
つまり、毛の根本から先端までなだらかに細くしていくことを可能にしている。これこそ目標としていた「イタチの毛」である。このテーパー加工技術は、世界で唯一ぺんてるでしか行う事ができない。
ぺんてるが保有する世界唯一の技術なので、世界中の筆ペンにおいてナイロンを使ったものは「ぺんてる筆」、「アートブラッシュ」、「きらり」しか存在しない。
ほとんどの筆ペンは、 PBT(ポリブチレン テレフタレート)という素材が使われている。この素材は、ナイロンのように水分を吸収せず、「テーパー加工」は先端だけとなってしまい、結果、繊維同士が馴染まず、穂先がまとまりにくくバラバラになってしまうという。
ここが「ぺんてる筆」が他社製品と一線を画す点である。
そして、穂先の形状にバラつきがないようにナイロン毛を均一に混ぜ合わせる「混毛」という作業を行っているという。人の目と手で一束一束形状のチェックが丹念に行われる。
この作業は、現在も人の手で行われているというから驚きだ。これをしっかりと行わないと、品質のいい「ぺんてる筆」にならないそうだ。
「ぺんてる筆」は独自のテーパー加工が施されたナイロン毛を一本一本束ねて作られている。 穂先の先端側はテーパー加工により作られた細いナイロン毛がまとめられている。それゆえ穂先での書き味はとてもやわらかい。
一方で根元はテーパーが少ない、つまり太くなっていてコシが強い。この絶妙なしなりとコシが「ぺんてる筆」ならではの書き味に繋がっている。「イタチの毛」など獣毛の筆は全体がやわらかめなので、ある意味では獣毛筆の性能を超えた人造毛筆とも言われている。
「ぺんてる筆」は、後軸全体がインクタンクになっている。使ったことがある方ならご存じだと思うが、ここを少し強く握ると中のインクが穂先に送り出される。私はてっきり、この軸の内部は単純にインクが入っているだけかと思っていた。
しかし実際は違っていた。軸の中には、細いパイプが入っているのだ。なぜ、わざわざこのようなパイプを入れているのかというと、通常であれば、タンクをギュッと握ると大量のインクが穂先側に一気に送られてしまう。このパイプは、そのインクを絶妙に調整する、大変重要な役割を担っていたのだ。
インクタンクを分解してみると、内部に細長いパイプが入っている。
パイプ上部には、インク量を調節する黒い「弁」のような役割を担うパーツがある。
このパーツには、とても小さな溝が開けてある(上記写真:左)。実はこの穴、タンク内のインクをパイプに送り込むための穴なのだ。あまりに小さ過ぎるので、正直見つけるのに苦労した。しかしこの穴のサイズ感が、インクをバランス良くパイプに送る働きを担っているというのだ。こんな小さな穴なのに、役割は大きい。
一方、黒いパーツ上部には、まるでパックマンのような形をした白いパーツが入っている。(上記写真:右)このパーツは、パイプ内に充填されたインクを、今度は穂先にバランス良く送る役割を担っているらしい。なぜこのような形をしているのか、これも理由までは教えてくれなかったが、様々な研究と改良を重ねた結果、この形になったようだ。インクタンク内部という、ほとんどのユーザーには見る機会がない舞台裏の装置まで、実に繊細な工夫が施されている。
筆ペンというと、苦手意識を持っている人は私を含め多いと思う。一方で筆ペンは、結婚式の受付など重要な場面で書くことが多いので、上手に書けるに越したことはない。そこで大橋さんに「ぺんてる筆」でキレイな文字が書けるようになるコツをお聞きしてみた。
ほとんどの「ぺんてる筆」のインキは染料インキ。 紙への染みこみやすさを考慮しているため。
ポイントは、穂先の先端だけを使うことだという。穂先の先端はやわらかくしなる部分だ。そのしなりを使って書いていく。この時、軸はペンをもつように普通に握って、斜めにしても大丈夫だそうだ。あくまでも軽いタッチで穂先を使って書いていく。これだけで、抑揚のあるキレイな文字になるという。初心者はまず、「極細」穂先を使うといいそうだ。この方が穂先が太くなりにくい。
大橋さんは、ぺんてるに入社して筆ペンの開発に携わるようになってから「ぺんてる筆」を使い始めた。特に書道を習っていたという経験がないという。そんな大橋さんのサラサラとしたためる文字は、筆ならではの美しさに満ちていた。
また、「ぺんてる筆」を使っていて、万が一穂先がばらけてしまったら、70°くらいのお湯に少しだけ穂先をつければいいという。
そうすれば、ほとんどの場合もとに戻るそうだ。なお、そもそも「ぺんてる筆」は、穂先が常にまとまるつくりになっている。
取材の最後、大橋さんに手作業で筆ペンの穂先を仕上げていく職人技を見せていただいた 。
実際の製造工程ではこの工程は機械化されているが、基本的な目的は同じである。
「ぺんてる筆」商品詳細ページ
http://www.pentel.co.jp/products/brushpens/brushtype/pentelfude/
「アートブラッシュ」商品詳細ページ
http://www.pentel.co.jp/products/brushpens/brushtype/artbrush/
「きらり」商品詳細ページ
http://www.pentel.co.jp/products/brushpens/brushtype/kirari/
筆ペン 毛筆タイプ一覧ページ
http://www.pentel.co.jp/products/archive/brushpens/brushtype/
提供元:ぺんてる株式会社
出典元:表現の道具箱
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