2021年04月10日

〈教えて! 獣医さん〉おなかの寄生虫について聞いてみよう

by デビフペット株式会社

公開:2021.04.10 21:00 更新:2021.10.04 16:23

ペットを新しく飼い始めた時、または定期健康診断の時、必ず獣医さんから「お腹に虫がいないかどうか検査しましょう」と言われますね。中には実際にペットの糞の中に虫が入っているの見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ペットのお腹に寄生する虫には実は何種類もあって、その中には人にも害を及ぼすことがある虫がいることをご存知でしょうか?今回は良く耳にするけど、実はちゃんと理解されていない、ペットのおなかに寄生する虫についてお話しをしましょう。

Q1.ペットに寄生するお腹の虫にはどんなものがいるんですか?

A.

ペットの消化管内に寄生する虫は主に次の4種類です。

回虫(かいちゅう)

成虫は白くて細長いそうめんのような形をしており、寄生したペットの糞や嘔吐物の中にくるりと丸まって見られることが多いようです。回虫の中でも特にペットで問題となるのは犬小回虫、犬回虫、猫回虫の3種です。比較的大きな虫ですので、若い動物が多数寄生されると栄養不良になるだけでなく、腸閉塞を引き起こすこともあります。

鉤虫(こうちゅう)

成虫は1~2センチほどの糸状の形をしています。小腸の内壁に咬みついて吸血するため、感染されたペットは貧血と脱水、栄養不良を引き起こします。寄生数が多いと、腸からの出血のため真っ黒いタール状の下痢が見られることもありあます。感染経路は口から飲み込むだけでなく、土の中で孵化した幼虫が傷口のある皮膚から入り込むこともあり、その時には皮膚炎を発症することもあります。

鞭虫(べんちゅう)

成虫は5センチほどの細い糸のような形をしています。盲腸粘膜に体を深く潜り込ませて吸血するため、下痢や体重減少を引き起こし、感染数が多いと便の中に赤い血が混じることもあります。虫卵は目に見えないくらい小さなレモン型をしていますが、非常に生存力が強く、湿った土の中などで数年間休眠状態のまま生き続けることが出来るため、庭などがいったん虫卵を含んだ便などで汚染されると、ペットに虫下しを飲ませても何度も再感染を繰り返すことがあります。

条虫(じょうちゅう)

猫条虫、瓜実条虫、マンソン裂頭条虫など数種類の条虫がペットに寄生することが知られています。条虫本体は非常に長く、瓜実条虫などは全長50センチを越えることもありますが、ペットの体から外に出る時は虫体の一部(片節)がちぎれて出てきます。特に瓜実条虫はちぎれて出てくる片節がキュウリの種のような形をしていて、乾燥するとゴマのように見え、ペットのお尻にゴマ粒がたくさんついているように見えます。

Q2.うちの子はまだお母さん犬から離乳したばかりで、外に出たことはありません。

それでもお腹の中に虫がいることがあるんですか?

A.

回虫や鉤虫は、子犬がお腹の中にいる時に胎盤を介して母犬から子犬に寄生することがあります。また母犬の乳腺組織にいた虫が出産時に免疫機能が低下した時に活性化し、乳汁を介して子犬の腸内に移行することもあります。

ですから、たとえ小さな子犬であっても既にお腹の虫が寄生していることはよくあることです。 小さな犬ほど寄生された影響は大きく出てきます。成長不良になったり、虚弱体質になることはもちろん、ひどい場合には多数の虫が腸に詰まって腸閉塞を起こしたり、重度の体調不良から死に至る場合もあります。ですから、小さなペットを家族に迎えたときほど、なるべく早く動物病院で診て貰うようにしてください。

Q3.ペットのお腹に虫がいるかどうかは、どうやって調べるんですか?

A.

病院ではお腹に虫がいるかどうかは検便によって便の中に虫の卵があるかどうかで検査していきます。

方法としては、直接法といって少量の便をスライドガラスの上にのせて薄めてから顕微鏡で検査する方法と、浮遊法といって便を食塩水に溶かして、浮いてきた虫の卵を集めて顕微鏡で観察する方法があります。しかし、これらの検査では寄生数が少数の場合には1回の検査では見つかりにくく、また瓜実条虫の卵などはこの方法では発見されにくいということもあります。

ですからまずは飼い主さんが、ペットの排泄物を始末するたびにおかしなものが入っていないか良く観察する、ということが非常に大切になります。

Q4.今そんなにひどい症状を示していなくても、駆虫薬を飲ませる必要があるんですか?

A.

上記で示した寄生虫の一部は実は人にも感染する危険性があります。

例えば犬回虫の卵を何かのきっかけで人が口にしてしまった場合、虫は腸の中だけに留まらず、肝臓や肺、脳など体のあちこちに移動し、それぞれの場所で「幼虫移行症」という症状を引き起こします。たとえば、肝臓に回虫が留まった場合は急性肝炎、神経に留まった場合は運動障害などそれぞれの臓器の障害がみられるようになります。特に寄生虫に対する抵抗力が低い子供や老人は命に関わる重大な疾患になることもあります。

ですから、たかがペットのお腹の虫と思っても、定期的な検査と病院での駆虫は必ず行うようにしてください。

Q5.お腹の虫が出たのに、ノミの駆除剤を処方されました。どうしてですか?

A.

実は、瓜実条虫という寄生虫はノミを介してペットに寄生します。ペットのお尻から排泄される条虫の片節の中には虫卵がたくさん入っています。ノミは幼虫の時はペットのフケなどを食べていますが、そのときに条虫の卵も食べて体内に取り込みます。成虫になったノミはペットの体に飛びついて血を吸うようになりますが、その時に痒みを感じたペットが口で毛繕いをする時に、ノミを飲み込んでしまうことによって条虫はペットの消化管の中に入り込み、大きく成長するのです。

ですから、瓜実条虫の瓜の種のような片節が便の中に見られたら、お腹の中の虫を駆虫するのと同時に、ペットの体に寄生しているノミも駆除するようにしましょう。

提供元:デビフペット株式会社

https://www.dbfpet.co.jp/

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