2021年03月14日
by タキイ種苗株式会社 |
公開:2021.03.14 11:40 更新:2021.10.04 16:23
2017年は秋台風の影響で、産地の多くが被害を受け、その結果ネギの価格が高騰し、春まで高い価格で取引されました。ここ数年の市場価格を見てもネギは価格の暴落が少なく、比較的高い価格で取引されています。もうかる野菜のひとつとして、新たに作付けする産地もあり、全国的に見ると作付面積は微減でとどまっています。
ネギは高温・多湿を嫌う作物のため夏秋どりの中心産地は、北海道や東北などの冷涼な気候の産地に集中していますが、近年の温暖化により、それらの地域でも耐暑性にすぐれる品種が必要となります。さらに台風の発生により大きな被害を受けないよう、できる限り葉(葉身)をコンパクトにし、風による倒伏が少ない品種が求められます。
そこで、葉身を短く小葉立性にし、濃緑、硬葉で、さらには襟部のばらけを遅くすることで倒伏や耐暑性にすぐれる品種の育成を目標としました。
茨城研究農場 雨村 拓央
「名月一文字」は全般緩やかに生育するため収穫までの日数を長く確保することが必要です。また高温期でも緩やかに生育する一方、晩秋から冬場の低温期にかけて生育が鈍り、休眠に入るタイミングが秋冬系の品種より早くなります。したがって秋冬どりの播種期で栽培すると軟白長が足りなくなるため注意が必要です。
一般地では11月まで、冷涼地では10月までに収穫を終えるよう播種、定植時期を計画します。
「名月一文字」は、草姿が濃緑で小葉立性のため土寄せや薬剤散布などの管理作業が容易に行えます。草丈は85~95㎝、葉鞘部は35~40㎝とコンパクトで風による倒伏の被害が少ない品種です。
首部のしまりがよく、襟部のばらけが遅い品種です。特に高温期に襟部がばらけると、そこから軟腐菌が侵入し発病しやすくなります。
本種はクズの発生が少なく、Lサイズ中心によくそろう秀品率の高い品種です。さび病やべと病にも比較的強いものの、予防を中心とした薬剤散布は必要です。
皮むきが容易で、葉身も短いためごみの量を軽減できます。また、黒柄系ながら肉質は緻密で繊維質は少なく、味が濃いため、焼き物や煮物料理に適します。
生育に合わせた緩やかで持続的な肥効体系が効果的です。有機系肥料や緩効型の肥料を組み合わせながら、追肥を少量ずつこまめに施すことが上作のポイントです。
特に高温期はネギの活性が弱まるため、土寄せや多量の施肥はストレスとなり、軟腐病などの発生を助長します。また高温期に襟部が隠れるまで土寄せを施すと、襟部から病原菌が侵入し、病害のリスクが高まりますので、土を寄せすぎないようにすることも重要です。
耐病性に関しては、品種間差もありますが、基本どのネギも罹病しますので、予防を中心とした薬剤散布が重要です。高温期に問題となる軟腐病に関しては、治癒剤はないため高温期を迎える前に、土寄せの際に殺菌剤を混和することが必要です。
さらに高温期はネギアザミウマなどの害虫も発生しやすくなり、商品価値も下がりますので、粒剤、水和剤などの殺虫剤を組み合わせながら発生がひどくなる前に抑えることが重要です。
ネギの根は酸素要求量が高いため、土寄せすると根は上部の方に伸長します。近年の異常気象、ゲリラ豪雨によりネギの根が冠水し腐敗する現象が各地で問題になっています。そのような場合は酸素供給剤や発根を促す亜リン酸肥料の利用がおすすめです。
提供元:タキイ種苗株式会社
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