2020年12月15日
by 京都機械工具株式会社 |
公開:2020.12.15 18:10 更新:2021.10.04 16:23
目に見えないとても小さな変化量ですが、ねじは締結によって伸びたり縮んだりしています。そのため、ねじを締めすぎると伸びてしまい挟む力が弱くなります。ボルトの締め付けが弱いと、周りの振動や熱などの影響でこのバランスが崩れ、ねじは緩んでしまいます。逆に締め付けが強いと、締め付けられた物(部品等)やねじ自体の破損を招きます。
ねじをクリップに置き換え、ねじが伸びる実験を行います
はじめに紙を5枚挟んだときは、挟んだあとクリップを外しても、クリップは元の形に戻りました。これは一度開いたクリップが元の形に戻ろうとする力が働いたからです。
20枚を挟んだときは、クリップの「戻ろうとする力」の範囲を超えて広げてしまったため、クリップが少し開いてしまい、挟む力が弱くなりました。
50枚では、クリップは開いたまま完全に元に戻らなくなり、クリップの挟む力は無くなってしまいました。これが「鉄が伸びた」状態です。
ねじの戻ることができる範囲を超えた力で締めると、ねじが伸びてしまい戻らなくなります。つまり、締めたはずのねじが知らない間に緩んだり、外れる原因となります。
締め付けられていたボルトを緩めると、引っ張られて伸びていたボルトは元の形に戻ります。しかし、締め付ける力を増やしていくと、ある時点からボルトは完全に元の形には戻らなくなります。この境界を「降伏点」といい、ボルトが完全に元に戻る範囲を「弾性域」(弾性変形範囲)、完全に元に戻らなくなる範囲を「塑性域」(塑性変形範囲)といいます。ボルトをさらに締め付けていくと、最終的にねじ切れてしまします。この点を「破断点」といいます。(上図参照)
ボルトが緩まないようにするには、なるべく大きな力で締め付けることが望ましいです。しかし、ボルトを塑性域まで締め付けてしまうと、破断点に近づくため危険です。また、塑性域まで締め付けてしまったボルトは変形して元の形に戻らないため、再利用はできません。従って、ボルトは弾性域の範囲内で使用する必要があります。(※)
※エンジンのヘッドボルトなど、塑性域で締め付ける特殊なボルトもあります。
提供元:京都機械工具株式会社
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