2022年01月10日

水耕栽培の野菜が危険って本当? よくある疑問への回答と安全性を調べてみた!

by DCM 編集部

公開:2022.01.10 05:00 更新:2022.01.12 14:06

最近、水耕栽培で生産された野菜がスーパーなどに並ぶことも増えてきました。また、自宅で手軽に水耕栽培をするかたもよく見かけます。

しかし、化学物質からなる液体肥料を使うことや、自然光を浴びないことなど、人工的に育てられた野菜の安全性に疑問を持つかたも多いことでしょう。

そこでこの記事では、水耕栽培の野菜が危険なのかどうか、よくある疑問への回答と安全性を調べてみました。

そもそも水耕栽培ってどんな育てかたなの?

まずは水耕栽培が土耕栽培とどう違っているのか、どんなふうに育てられているのかということを知ることから始めましょう。

・土の代わりに水と液体肥料を使う栽培法

・太陽の代わりにLEDを使うこともある

・工場での大量栽培も家庭での個人栽培もできる

これら3つの水耕栽培の特徴を一つずつ見ていきましょう。

土の代わりに水と液体肥料を使う栽培法

水耕栽培では土耕栽培で使われている土の代わりに、水と液体肥料を入れた水溶液を使います。カイワレ大根やブロッコリースプラウト、ベビーリーフやレタスなど、生で使われる野菜の多くが水耕栽培で育てられ始めています。

土の代わりに水を使うことで成長も早く、清潔に育てられ、害虫被害にも遭いにくいメリットがあることからその需要も増えつつあります。

太陽光の代わりにLEDライトを使うこともある

水耕栽培では日光の当たる場所で栽培できる太陽光型もあれば、太陽光の代わりに蛍光灯やLEDを使って育てる人工光型もあります。植物工場のようなスタイルではLEDライトによる水耕栽培が多くおこなわれています。

LEDライトを太陽光の代わりにすることで、天候に左右されずに光を与えることができるので、成長にムラができにくく農作物を一年を通して安定した状態で供給することができます。

家庭で水耕栽培をするときには、太陽の当たる場所における場合は太陽光型、日の当たらないキッチンの場合はLEDライトや蛍光灯の光で育つ人工光型と、環境に応じて使い分けもできますよ。

工場での大規模栽培と家庭での個人栽培がある

植物工場などの大量生産を目的とした水耕栽培は、水耕栽培の装置がシステム化されてコンピューター管理されていることがほとんどです。

一方、家庭での個人栽培は、簡単なものから、少々手の込んだシステムでも手作りの水耕栽培装置を作ることができます。

【工場での大規模栽培】

工場での大規模栽培では、太陽光がしっかりと当たるビニールハウスで水耕栽培をしている太陽光利用型と、室内で大量の水耕栽培システムを導入し、LEDなどの人工光を利用した完全制御型があります。

太陽光を利用する場合は季節や天候などにより、日照時間や光量に変化が生じるため、成長にムラが出てきます。また、屋外での栽培になるので害虫による被害も出てきます。

LEDを利用した完全制御型の場合は、日照時間や光量、温度管理などの環境面が常に一定に保たれるので、安定した成長が見込まれます。

【家庭での個人栽培】

家庭での個人栽培にはペットボトル、プランター、ガラスの器などを使って簡単に水耕栽培の装置を作ることができます。少し規模を大きくしたい場合は、コンテナを何段か組み合わせて、ポンプで水をくみ上げながら循環させる装置を作ることも可能です。

家でおこなう水耕栽培の場合、日当たりのよい窓辺に置く、蛍光灯の下に置くといったことだけでも充分、光合成を促すことができます。

日光あるいはLEDで光合成を促しながら、水と液肥を混ぜた水溶液を循環させて栽培する方法は、規模とサイズが違うだけで、工場での大規模栽培も家庭での個人栽培も同じ仕組みです。

最近では、水耕栽培で作られた野菜をスーパーなどでも見かけることが増えました。LEDがまぶしいガラスケースにレタスなどが栽培されていて、そのレタスを直接買うことができるところもあるようです。

水耕栽培の野菜って危険なの?よくある懸念を調べてみた

ここからは、水耕栽培の野菜に対する一番の不安要素について答えていきます。そのためによくある懸念をピックアップしてみました。

・水耕栽培に使われる液体肥料の内容は危険?

・土からの恵みを受けない水耕栽培野菜の栄養価は?

・水耕栽培で作られた野菜は弱く、病気への耐性が低いのでは?

これらは多くの人が野菜を購入する際に気にしているポイントです。疑問の答えと、それに対する解説をしていきます。

液体肥料は危険なの?

結論からいえば、水耕栽培で使われている液体肥料は安全というのが正解です。

液体肥料という言葉だけで聞くと、なんとなく危険な印象を抱くというかたもいるかもしれませんが、水耕栽培で使われる液体肥料に農薬は含まれていません。

液体肥料には三大要素、特殊要素、微量要素といった成分が入っています。植物の生育に必要なカリウム、リン、カルシウム、マグネシウムなどが含まれていて、土耕栽培で使われている有機肥料と変わりがなく、人体に悪影響を及ぼすものではありません。

栄養価が少なくなるのでは?

実は、水耕栽培で作られた野菜の栄養価は土耕栽培と同じ、もしくは高めというのが正解です。

土耕栽培で土からの栄養やミネラルが得られるとはいえ、土の中で根を伸ばしていくのは野菜にとって大きなエネルギーを必要とします。水耕栽培では、そういったエネルギーをムダに消費することなく、ストレスフリーに根を伸ばすことができるのです。

のびのびとした根からは栄養と水分をしっかりと吸収し、ダイレクトに野菜へと供給されるため、よく成長し栄養価も高くなります。

病気への耐性が低くなることはある?

水耕栽培での栽培中、野菜に病原菌が発生したときの耐性が低いのは確かでしょう。しかし、そういった危険性を把握しているからこそ、栽培環境を整えるなどの対策がしっかり取られていることも事実です。

できるだけ無菌状態での栽培環境を作ることや、繁殖しやすい病原菌を調べ、その病原菌に強い野菜づくりの技術開発に取り組んでいます。

家庭でする水耕栽培の野菜には危険性がある?

家庭での水耕栽培は、いわゆる素人の作る水耕栽培装置です。知識も少ない状態で水耕栽培をしても大丈夫なのでしょうか。

水耕栽培はやりかたさえ間違わなければ誰にでも作ることができます。注意点などを確認していきましょう。

結論:土耕栽培より安全

土耕栽培では害虫による被害に悩まされることが多いのですが、水耕栽培は害虫の被害も受けにくいため殺虫剤を必要としません。

人体に影響のある農薬などを使わないように、自分でしっかり管理することができます。

成長過程やその様子がいつも目の届く範囲にあるので、最適なタイミングで収穫したり世話をしたりすることができます。

そのため、家庭で育てるならむしろ水耕栽培のほうが安全だといえます。

適切なやりかたを守れば安全

水耕栽培でも根腐れやカビ、雑菌、藻の発生などのトラブルに遭うことがあります。こういったトラブルを未然に防ぐためにも、原因と対策法についてあらかじめ勉強しておくことが大切です。

それらのトラブルが発生してしまった場合でも、適切な方法で対処すれば解決することも可能です。もし解決できなかったとしても、失敗は成功への糧ともなるので、挫けず前向きに次を育てていきましょう。

水耕栽培は知識があれば安全だと判断できる

これまでの話で水耕栽培に対する疑問や不安要素は消えたでしょうか。水耕栽培の野菜は見た目がきれいなだけでなく、栄養面でも優れているとわかれば、これから安心して利用しようという気持ちになれます。

もちろん、水耕栽培に向く野菜と向かない野菜があるので、なんでも水耕栽培で作れるというわけではありません。

天候や災害から影響を受けにくい水耕栽培がこの先ますます発展して、野菜の国内生産が安定すればうれしいですね。

また、家庭での水耕栽培なら、もっと自分の目で見て安心な野菜作りができるということがわかりました。家庭で食べる野菜を全て賄うのは難しいでしょうが、ほんの一部でも自給自足にチャレンジしてみるのもいいでしょう。

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