2021年01月08日

ヤマハ除雪機のあゆみ

by ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社

公開:2021.01.08 02:00 更新:2021.10.04 16:23

“青い除雪機”ヤマハスノーメイトの歴史をご紹介します。

降雪地域の生活に密着して進化したヤマハスノーメイトの足跡

ヤマハ発動機は、1955年、最後発のモーターサイクルメーカーとして創立。そこで培った小型エンジン技術をもとに、1960年船外機、1968年スノーモビルを市場に送り出すなど、着々と事業の多軸化を進めていきました。“青い除雪機”ヤマハスノーメイトも、レーシングカートや発電機と同様、新しい領域へのチャレンジから生まれた製品のひとつ。降雪地域の人々の要望に応え、より力強く便利で扱いやすい生活の道具として熟成・進化を重ね、確かな実績と信頼を築き上げてきました。その足跡を、歴代の製品とともにご紹介します。

1. 汎用エンジンを活かす製品開発 除雪機への入り口は融雪剤散布機

事業のスタートは、除雪機そのものではなく、耕作地や道路の積雪を取り除く融雪剤散布機「YS1」(1973年発売)でした。ロウト型のサイロに粒状の融雪剤を収め、スノーモビルで牽引しながら2枚の円盤ブレードの遠心力と風圧で左右・後方へと幅広く散布するもので、動力に2ストローク・単気筒の汎用エンジン「MT110」を採用。市場の要望を取り入れながら進化し、好評を博しました。

YS1

2. 始まりはアメリカ製品の輸入販売 そして「YT665」を共同開発

除雪機本体の取扱いは、1974年、アメリカから輸入した製品「TORO832」「TORO524」の販売が第一歩。冬でも販売できる商品がほしいという降雪地域の要望に応えたものですが、ドラム式のオーガ(集雪装置)やタイヤを使った手押し式走行装置が日本の湿った重い雪質に適さず、長続きしませんでした。そこでヤマハは、すでに除雪機のノウハウを持っていた東北の協力会社(ササキコーポレーション)と提携。4ストローク・256cm³・6馬力エンジンを搭載する最初の除雪機、ヤマハスノーメイト「YT665」を共同開発し、1978年に新発売しました。

TORO832、TORO524
YT665

3. 家庭での扱いやすさ・便利さを追求したヤマハオリジナル除雪機「YSMシリーズ」

1980年発売のスノーメイト「YSM250」は、企画・設計・開発・生産まで、ヤマハが初めてオリジナルで作り上げた除雪機です。除雪面積7~15坪ほどの一般家庭を想定し、ベビーカーを押すような感覚で扱える17kgの軽量・コンパクトなボディと国内初の1ステージ式集雪投雪機構、この製品のために新開発された軽量・シンプルなシリンダーヘッド一体型の2ストローク・82cc汎用エンジンを採用。さらに専用設計のオートルーブ(混合給油)機構なども備え、簡単な操作、良好な始動性、環境にやさしい低振動・低騒音を実現しました。

しかし、除雪機のもっとも重要な機能は「より楽に、より短時間に、積雪を狙ったところへ処理できる」こと。例えば、螺旋状の回転刃を持つ集雪機構(オーガ)と投雪するためのシュート機構を別々に備えた2ステージ式は、コンパクトなYSM250の1ステージ式よりも構造が複雑になりますが、安定してスムーズに雪を掻き出し、その雪を力強く遠くへ飛ばす能力に優れています。そこでヤマハは、家庭向けに前進3段/後進2段変速機を備えた5.5馬力の4ストロークエンジン、2ステージオーガブロア式の集雪投雪機構を搭載したヤマハオリジナル第2号「YSM555」を開発。重量79kgの軽量・コンパクトなボディながら、YT665に迫る最大投雪距離14m、毎時32tの除雪能力を実現しました。

YSM250
YSM555

4. 本格的な除雪性能を求め新開発 業務用モデル「YT1090」

一方、主力モデルのYT665は、基本となる除雪性能・機能の改良を重ね、店舗や事業所の駐車場、市街地などでも幅広く活躍しました。しかし、降雪量の多い地域や広い敷地を短時間で効率よく除雪するには、より大きなパワーと除雪能力の高い車体が必要です。そのためヤマハは、1983年、最高出力10馬力の400ccエンジンと除雪幅900mmのオーガによって毎時60トンの除雪能力を発揮する本格的な業務用除雪機「YT1090」を発売。使用する目的や場所に合わせ、家庭用と業務用、2つの製品ラインナップを明確にしました。

YT1090

5. より扱いやすく便利に、効率的に 機能進化、製品分化の時代

1980年代半ばから、ヤマハは扱いやすく便利な機能の強化に注力。1985年発売の「YT875」に初めてセルスターターを採用し、1987年にはレバー操作で進行方向を変えられるサイドクラッチ、オーガを油圧で上下するチルト機構などを相次いで実用化しました。1988年発売の「SA560E リッキー」は、除雪速度をレバーひとつで自在に調節できる無段階変速機(リングコーン式トラクションドライブ)、モーターで投雪方向を変えられる電動シュートも備え、家庭用小型除雪機としての機能を集大成したモデルです。

業務用モデルでは、これら新機能をいち早く取り入れてきた「YT875E」に、1991年、新しい無段階変速機構(HST)を採用。ひとつの完成形にたどり着きました。また新たな試みとして、広い農地や大規模駐車場向けに除雪幅1100mm、傾斜地でも除雪しやすいオーガローリング機構を備えた大型モデル「YT1211E」(1987年)とハイパワーなディーゼルエンジン搭載の「YT1811E」(1988年)を導入。製品ラインナップをいっそう充実させました。

SA560Eリッキー
YT1811E
YT875E HST

6. 集中と集約による生産性向上で急速な需要減少に対応

1980年代後半から90年代半ば、当時のスキーブームと裏腹に、日本では慢性的な暖冬傾向が続きました。それによって除雪機の需要も急速に減少。年間9000台を超えたヤマハの出荷台数は4分の1を割り込みました。そこで1996年、ヤマハは製品ラインナップを一新。家庭用「YT660E」、業務用「YT970E」「YT1080」「YT1290EXR」など、寒冷地仕様を施した新しい4ストローク・OHVエンジン搭載モデルに絞り込み、また生産拠点も東北の協力会社に集中化することで、徹底した品質管理と生産性向上をはかりました。この時期に確立した体制と製品は、現在まで受け継がれる基盤となっています。

YT660E
YT1290EXR

7. 「私にやさしい高性能」がキーワード 簡単・静音・パワフルな製品を追求

その後2000年代に入ると、ヤマハは製品ラインナップの性能・機能向上に着手。家庭の主婦をはじめ、誰でも簡単に操作できる扱いやすさ、面倒な手間を省く整備性、周辺地域に配慮した静粛性、楽に短時間で除雪できるパワフルな性能の向上をめざしました。そうして生まれたのが、収納時の燃料除去を容易にするワンタッチドレーン式燃料コック(YT970E)や異物を噛みこんでもオーガを壊さないシャーボルトガード(YT660ED)、エンジン部を囲い込んで騒音を低減する静音設計ボディ(YS870)、ベタ雪でも詰まらず快適に投雪できる樹脂板内蔵ジェットシューター(YT1070ED)などの各機能。なかでも静音設計、ジェットシューターは市場の要望を的確に捉え、ヤマハ除雪機の代名詞となりました。

2003年発売のYS1390AR/1390Aは、さらにコンピュータ制御による手元集中操作スイッチや自動旋回機能(フリーターン)などを加え、集大成した最上位モデルです。

YS870
YS1390AR

8. 新しい需要層の開拓と製品ラインナップの再編

静かで取扱いが簡単な除雪機の進化は、従来の業務用という垣根を越え、一般家庭の上位モデル購入を促しました。そこでヤマハは、従来の製品区分とラインナップを見直し、雪質や処理能力の大きさによってハイパフォーマンス、オールラウンド、ベーシック、コンパクトの4タイプに再編。同時に、手押し式モデル「YU240ゆっきぃ」やスイッチ操作で簡単に小回り旋回ができるイージーターン機能を装備した「YS870JT」「YS1070T」など、都市近郊の若い30~40代ファミリーや女性層に向けた製品を発売(2009年)。その後も普及価格帯のバリエーションを重点的に工夫し、新規需要の開拓に力を注ぎました。

YU240ゆっきぃ
YS1070T

9. 温暖化による気候変動・豪雪に対応

2010年以降、地球温暖化の影響と思われる季候変動・天候不順が顕著になり、降雪地域拡大や予期せぬ豪雪が多発。また雪質は重く湿りがちになり、除雪機の販売傾向も変化しはじめました。そこでヤマハは、2016-17年シーズンに向けて中型モデルの見直しをはかり、よりパワフルで扱いやすい「YT1380/1390」シリーズを投入。また、湿った雪や浅い積雪を押し集める除雪ブレード装備の小型モデル「YT660-B」「YS860-B」などもラインナップし、お客さまのニーズに応えました。

YT1380
YS860-B

10. ヤマハ除雪機40周年を機に、好評の小型・静音設計5モデルを一新

1978年にヤマハ除雪機第1号スノーメイト「YT665」を発売してから40周年となる2018年、独自の静音設計で好評を得ている小型モデルについて、外観や日常的な扱いやすさ・機能の向上と名称変更を行った「YSFシリーズ」5モデルを新発売、いっそう親しみやすく上質なラインナップとなりました。

YSF860
YSF1070T-B

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