2021年05月12日

修正のアイコン的ロングライフデザイン "修正液"

by ぺんてる株式会社

公開:2021.05.12 00:00 更新:2021.10.04 16:23

January 15, 2016

前回からお届けしている、ぺんてるが受賞した2015年「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」。
今回紹介する受賞プロダクトは「修正液」だ。私が社会人だった1990年代、この修正液はオフィスのあちこちで見かけることができた。
仕事をしていると、どこからともなくシャカシャカという音が聞こえてきたものだ。オフィスの風景の一部にすっかり溶けこんでいた。

今回もぺんてるのプロダクトデザインを統括する商品開発本部 デザイン室

プロダクトデザイングループ 次長 清水 和久さんにお話しを伺った

30年を超えるロングセラー

発売は1983年。それまでも修正液はあった。それらは小さなボトル式でキャップの内側に付いたハケで塗っていくものだった。

ぺんてるでは、そのハケ式の不便な点をクリアしようと考えた。不便な点とは、中身が残っていてもハケが固まって使えない、開け口が固まってしまう、固まった修正液を溶かす「うすめ液」を入れる必要があるなどだ。

それをクリアするために考え出されたのが、ペンタイプにするというものだった。

ぺんてるには、「ぺんてるホワイト」という白インキのマーカーが当時からあった。紙以外のガラスやメタル、プラスチックなどにも書けるマーカーで、一般的には工場などの工業現場で使われている。

ユニークなところではバーやスナックなどでウィスキーや焼酎をボトルキープする際の名入れにも使われている。この白インキをベースにぺんてるの修正液は誕生したという。

押すという行為をデザインしたボディ

当時青ボディの他、赤ボディもあった。青は油性・水性万能タイプ。赤は速乾性という特長に分けられていた。

その後、2つの機能を兼ね備えた修正液が開発され、一本化されていく。その際、日本では青ボディに統一された。

国によっては赤ボディで統一されているところもある。

最終的にたどり着いたデザインは、押しやすさも考えた目薬のようなペンボディ。

ボディには水面の波紋を思わせる三重の段差がある。

この段々構造により、ユーザーは特に説明書などを読まなくても、押して使うものということが自然に理解できるようになっている。これはユーザーの行為をデザインしていると言える。

このように段差があることで押しやすく、インクの吐出量の調節ができる

握ると段差のところに自然に指がくる

ボトルスタイルだったものをペンスタイルにするのは一見簡単なようだが、これがなかなか一筋縄ではいかない。特にペン先に大変技術力が注ぎ込まれている。

使ったことがある方ならおわかりだと思うが、修正するときにペン先を紙に押し込む。そうすると、修正液がでてくる。

これを支えているのが、ペン先内部にある「弁構造」。ペン先には細い棒状で中央に飛行機の翼のような突起のある弁が組み込まれている。それがバネにより固定されていて、書く時にそれが引っ込みその時できるすき間からインクが出てくる。

ペン先の先端にちょこんとでているパーツを

紙に押し込むことでインクが出てくる

細かな所を修正できるようにペン先は細くなければならないし、一方でインクの出をよくするために、インクの通り道をしっかりと確保しなくてはならない。そのせめぎ合いの中で作られている。最終的なペン先はすっきりと細く仕上げられた。

この部分の技術力は当初、他社が追随できず、ペンタイプの修正液はしばらくの間、他社製が市場に出てこなかったそうだ。

ペン先は「ぺんてるケリー」を思わせる2段階にわたり

ガクンガクンと細くなっている。細かな所を修正する時のペン先回りの視界は抜群によい

現在のものは視覚障害をお持ちの方が誤って目薬だと思わないように

ボディに「△」の立体マークを入れている。

シャカシャカ音の正体は?

ぺんてるの修正液を使う前には、本体を振って中の修正液を攪拌(かくはん)させる必要がある。

その際にシャカシャカとよい音がする。これにより、従来のハケ式で必要だった「うすめ液」が不要になった。

このシャカシャカは、本体内部に入っている金属パーツが奏でている。当初は、金属の玉が3個入っていたが、現在はインクも改良され金属の玉は2個になっている。

現在のぺんてる修正液には、このような金属の玉が2個入っている

キャップのもうひとつの役割

キャップの先端には意味深にグルリと円を描いた溝がある

キャップと言えば、インクのドライアップ(乾いてしまうこと)を防ぐものだ。この修正液では、それ以外にもうひとつ修正液ならではの役割がある。

修正液は乾くとインクが固まってしまう。ペン先にどうしてもそうした乾いた跡が付いてしまう。それをキレイに取り除く時にキャップを使うという。

キャップ先端の溝に修正液のペン先を差し込んでクルクルと溝に沿って回していく。溝の内側にはギザギザ加工がありペン先についたカスを除去してくれる。今回の取材で、私も初めて知った技だった。

ペン先をキャップ先端の溝に差し込みグルグルを回転させる

修正液は今も求められている

今や修正と言えば、テープが主流となっている。すっかり出番が少なくなっているだろうと思っていた。

しかし、職種によっては修正液でないといけないというシーンもまだまだあるそうだ。

たとえば漫画家やデザイナーなど。細かなところを消すという点では、修正テープより優位性がある。また消すだけなく白いペンとして描く用途として使われることもある。

久しぶりに私もシャカシャカと音をたてて修正をしてみたくなった。使う前に音がするというのは、さぁその作業をはじめるぞという気分にさせてくれる。

グッドデザイン賞公式ウェブサイト

http://www.g-mark.org

提供元:ぺんてる株式会社

https://www.pentel.co.jp/

出典元:表現の道具箱

http://pentel.blog.jp/archives/48681007.html

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