2021年03月10日
by DCM株式会社 |
公開:2021.03.10 07:00 更新:2021.10.04 16:23
この世に新しい命が宿った時から始まる、さまざまな人生の節目を通過儀礼、または人生儀礼と呼びます。帯祝い、お宮参り、七五三・・・・どれもおめでたい行事、お祝いであると同時に、無事に育ったことに感謝し、厄をよけて、これからの無事を願う祈りの行事でもあります。一つ一つの行事の意味を知り、家族で大切に心を込めて行いたいものです。
妊娠5ヶ月目に、妊婦さんのおなかに「岩田帯」という腹帯を巻き、おなかの赤ちゃんの成長の無事と安産を祈願する行事。はじまりは古く、『古事記』にも記述が残っています。紅白の祝い餅を食べるなど、地域によってさまざまな風習があります。
多産で安産な犬にあやかって、お参りは戌の日に出かけるものでしたが、最近では妊婦さんの健康状態のよい休日に、夫婦と女性の実家の母親が神社で祈祷を受けるというのが一般的です。
生後7日目の夜に、誕生した赤ちゃんの健やかな成長を願い、命名式を行う行事です。名前をつけて命名書に書き、神棚や床の間に飾ります。お祝いの仕方は地方によりさまざま。今日ではごく近しい人をお招きするのが多いようですが、昔は名前のお披露目会をかねて、たくさんの人を招いて祝い膳を囲みました。
現代では、実質的には母子の退院祝いとして、両家の両親など身内だけで集まるケースが多いようです。赤ちゃんの名前は、法律上は生後14日間のうちに届ければOKですが、何らかの形でお祝いするなら、この日までに命名し、赤ちゃんを名前で呼んであげたいものです。
自分の生まれた土地の守り神に、初めてお参りする風習がお宮参り。生まれた土地の守り神を産土神(うぶすながみ)といいますが、先祖の守り神である氏神(うじがみ)様にお参りする場合もあるようです。地方のしきたりによりますが、生後1カ月前後を目安に行います。
当日は父方、あるいは母方の祖母が白羽二重の内着を着た赤ちゃんを抱き、その上に祝い着を羽織らせ、母親はそばに付き添います。男の子は黒や紺の地色に松や鶴、鷹や武者などの図柄でたくましく、女の子は花や蝶、手毬などの友禅模様でやさしく愛らしく整えます。
神社では神主の祝詞とお祓いを受け、玉ぐしをささげて、子どもの健やかな成長を祈願します。神社からいただいたお神酒やお札、お守りは自宅の神棚に供えます。お世話になった家や親戚にお礼の挨拶に回り、内祝いの品を配った後、近親者で祝い膳を囲むというのが従来のお宮参りの進め方です。現在もお宮参りの習慣は根強く残っていますが、その方法は簡略化されています。
生後100日目に、赤ちゃんに初めて食べ物を与える儀式のことです。地域によっては110日目、120日目に行うところもあり、「箸ぞろえ」、「箸始め」、「歯固め」とも呼ばれます。このころは、離乳食の開始時期、また、早い子では歯の生え始めの時期にあたります。お食い初めは、そこまで子どもが成長したことを祝うと同時に、子どもが一生食べ物に困らないよう願う儀式でもあります。
当日は赤ちゃんのために祝い膳を整え、身内や親しい人を招いて祝い膳を囲み、赤ちゃんには箸で食べさせます。赤飯に尾頭付きの焼き魚が定番的なメニューで、歯の丈夫を願って、武家では「勝ち栗」、商家では小石などを添える風習もあったそうです。
文字通り、赤ちゃんが生まれて初めて迎える節句のことです。女の子なら3月3日の桃の節句、男の子なら5月5日の端午の節句を祝い、今後の健やかな健康を祈ります。この節句の時点で赤ちゃんが生後1ヶ月以内なら、翌年に繰り越して祝う場合が多いようです。身内や親しい人を招いてお祝いをします。
毎年の誕生日を祝うのは欧米から伝わった習慣で、戦後に広まりました。日本では、元旦ごとに年をとる「数え年」で年齢を数えてきたのです。しかし、日本でも昔から「初誕生」と呼ばれる満1歳の誕生日だけは、盛大に祝う習わしがありました。
「一生食べるものに不自由しないように」と、一升の餅米でついた「誕生餅」を背負わせたり、踏ませたりして、健康で力強く育つことを願います。祝い膳も、以前は赤飯に出世魚を添えて、というのが定番でしたが、現在は特別な決まりはありません。バースデーケーキと赤ちゃんの好きな食べ物を用意し、家族で一緒に楽しくいただくのが何よりのお祝いでしょう。
子どもの祝い事の中で、最も華やかなのが七五三の行事。もともとは、宮家や公家、武家だけで行われていました。3歳のお祝いは男女児とも、5歳は男児のみ、7歳は女児のみお祝いするのは、昔のならわしに由来したものです。
七五三は数え年で祝います。男の子は3歳と5歳、女の子は3歳と7歳の11月15日に、近くの神社に家族でお参りし、これまでの成長を感謝して将来の幸せを祈ります。現代では、15日当日のお参りにはさほどこだわる必要はなく、前後の休日に行えばよいでしょう。
男女とも数え年で13歳になった4月13日に、虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)に参拝する行事を、十三参りといいます。虚空蔵菩薩は京都・嵐山の法輪寺にあり、「嵯峨の虚空蔵さん」と呼ばれ親しまれています。このため、十三参りは関西地方を中心に伝わるならわしで、ほとんど行われない地方もあります。
虚空蔵菩薩は、福徳と知恵を授けるといわれており、参拝することで、知識と教養の豊かな人間に成長することを願うことから、十三参りは「知恵もうで」、「知恵もらい」とも呼ばれています。
冠婚葬祭の「冠」とは、子どもの成長に伴う祝い事全般をさします。「冠」の由来となったのは、男子が初めて冠を被る元服の儀式である「加冠の儀」。女の子には長いたれ髪を初めて結い上げる「髪上げの儀」などの儀式があり、それが今日の成人式の原型となっています。
これらの儀式を済ませた男女は「一人前」とみなされ、一族の繁栄にもつながるというので、とても大事な儀式とされていました。明治維新以後は次第にすたれ、昭和23年、1月15日を「成人の日」と定め、満20歳になった男女を祝う日になったのです。現在では、成人の日は1月第2月曜日となり、各地で式典や祝賀パーティーが開かれています。
「伝統の作法と最新マナー 冠婚葬祭常識辞典」、「日本行事を楽しむ12ヶ月くらしの歳時記」(ともに主婦の友社刊)より
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